75年後の長崎で
2020年9月30日午後7時前
原爆が落とされた真下の
原子爆弾落下中心地碑の前にある
原爆殉難者名奉安箱の上面に両手を置いた
ほんのり温かくて
昼の温かさが残っていたようだ
その奉安箱の中にある名簿に記された一人ひとりにあった
温かな家庭
温かな家族
温かな友人
温かな人生
1945年8月9日の熱風が
そのすべてを焼きながら吹き飛ばした
黒御影石でできた三角柱の中心地碑の磨かれて滑らかな面に
上空の少し明るい星の姿が映っていた
三角柱のそれぞれの面に両手をつけて
戦争のない平和な世界になりますように、と三度祈った
時間がたつごとに星が増え
地上に届く明るさを増した
爆心地公園の端の方では
若いカップルが抱き合っていた
ここを中心にした広い広い周りで亡くなった
沢山沢山の人たちの
かなわなかった幸せな一生を
この二人には送ってほしい
たとえ恋人のままで別れることになったとしても
それぞれがそれぞれの
温かな家庭をつくり
温かな家族と
温かな友人たちと
温かな人生を送ってほしい