某日>大阪なんばの映画館で『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN
』を添人と二人で観ました。ボブ・ ディランの若き日のドラマでした。 初期の音楽活動のあまりにも短い年月のことなので、 ディランについてあまり知らない観客にとっては物足りない作品だ ろうと思いました。もちろん、 たった一日のことでも優れたドラマにすることは可能なので、 伝記映画だからもっと長い年月のことをドラマにしてほしかった、 という僕の思いは一つの意見でしかないのです。
しかし20歳頃から30代初め頃までの10年以上はディランに夢 中だった僕なので、「時代は変わる」 を歌い出したシーンでは思わず泣いてしまいました。
観客が1割ほどしか入っていなかったのですが、 ディランという巨星を映画にするにはどんなストーリーが良かった のだろうか、ともっともっと考えて映画を作ってほしかった!
映画が終わった時、「今日は拍手しないの?」 と添人が言いました。彼女とのファーストコンタクトは、 たぶん僕が21歳で添人が18歳の時で場所は大阪中之島の中央公 会堂でした。映画『バングラデシュのコンサート』 が上映されたのですが、 その映画に出演したディランが登場するたびに僕は画面に向かって 一人で拍手していたのです。僕の少し後ろに座っていた添人は「 ディランが好きな人がいるなあ!」と思っていた、 と後に付き合うようになってから話してくれました。
今はもう熱烈なディランファンではなくなっている僕は、 画面の消えたスクリーン前を通って静かに退出しました。